cinema

2010.08.09

ビューティフル・アイランズ

自然の波の音、水の音、人々の声、歌といった音声だけで、ナレーションも音楽もない。美しい島の風景を捉えた映像が、じっくりと見せる構成。

それはいいんだけど、「気候変動で沈む」ということを登場人物に言わせる(あえて地球温暖化という言葉は避けたそうだ)以上、やはり地球環境問題を考えさせる映画ではあるのだ。

監督がこの映画を作ろうと決心したきっかけになったパタゴニアの氷河が溶けていく問題と、アラスカの凍土が溶けるという話は、温暖化と結びつけてもいいと思うが、他の二つ(ベネチアの高潮による浸水とツバルの浸水)に関しては、一緒くたにするのは危険だ。
そういうことに関するナレーションがなく、科学的な解説もないのが、ちょっとまずいなあという印象。

どれも「沈みゆく島」の映像というくくりではくくれる。

でも、高度に開発された都市であるベネチアだけがあれほどまでの高潮にあって「沈む」というのは、明白に「地盤沈下」の影響でしょう。温暖化による海面上昇ならイタリア全土の海岸が沈むはず。

そして、今や温暖化で沈む島のシンボル的存在であるツバルも、実は人為的な原因による「沈下」であることは、ちゃんと指摘されている。
http://monden.daa.jp/01tuvalu/guest03a.html

私は、この映画は映像としてはいい場面がいっぱいあると思うが、見た後でいろいろ考えたり語ったりする人のために、やっぱりこういう解説をつけたパンフレットを発行すべきだったと思う。いや、そういうものがあってしかるべきだと思って見た後で買おうとしたら、なかった。映画館で売られていたのは、この映画のロケ地での写真とプロダクションノートを合体させた写真集のみ。これは、とても残念なことだ。

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2010.04.02

海角七号ー君想う、国境の南

魏特聖(ウェイ・ダーション)監督 2008年、台湾 原題「海角七號」
台湾で記録的な大ヒットとなったという評判の映画、大阪での上映も今日が最終日というので滑り込みで見に行きました。

時代を超えて二つのストーリーが交錯する。
恒春という台湾最南端の街で、元ミュージシャンの阿嘉(アガ:ファン・イーチェン)は、臨時の郵便配達をしながら、町おこしイベントの日本人の歌手(中孝介が本人の役で登場)のライブの前座として地元の人々とバンドに駆り出される。彼が手にした郵便物の一つは、今はない戦前の旧地名(それが海角七号)が書かれていて、配達不能。中身は日本人の男性から台湾の女性にあてられた古いラブレターだった。
書き手は植民地時代の日本人教師。教え子の少女(日本名、友子)への秘めた恋、彼はその思いを告げることなく終戦後、台湾を去った。彼の死後、出されなかった手紙の束を娘が見つけ、旧住所にあてて送ったのだ。
ライブのコーディネーター兼通訳を務める日本人女性の名前も友子。友子と阿嘉はイベントのすすめ方をめぐっていがみ合う。

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2010.04.01

シャーロック・ホームズ

ガイ・リッチー監督、ロバート・ダウニーJr.主演の「シャーロック・ホームズ」。
私が子どもの頃に読んだホームズもたしかに「拳闘の名手」だったりしたけど、この映画では、本格的にボクシングのシーンが出てくる。かなり、血の気の多いホームズ、今までの映像化されたホームズとはちょっと違う。どう見てもワトソンもホームズもいわゆる英国紳士からはほど遠い。これでもか、これでもかというアクションシーンの連続に度肝を抜かれる。
しかも、ジュード・ロウ演じるワトソンがそれほど間抜けでもなく、かなりデキる男でホームズはすっかり頼りっぱなし。変人なだけでなく、ちょっとダメ男なホームズである。ワトソンとの友情はほとんど、ホームズからワトソンへの一方的な愛にすら見える。ワトソンの婚約者、メアリーにはあからさまにその関係に嫉妬してる。ホームズとアイリーン・アドラーとの関係もなんとなく微妙である。

でも、映画としてはとてもテンポがよくて、映像もCG多すぎ、と思ったけどなかなか凝っていて家族で見るにはちょうどよく楽しかった。言ってみれば、キャラと時代設定だけはコナン・ドイルの原作から借りてきてはいるけれど、まったく新しいアクション・ヒーローものと思えばよいのだろう。

そういったところは、以前に見た「K-20 怪人二十面相・伝」を思い出す。高いところでの格闘シーン(まあ、アクション映画ではお約束か)も登場したし。
ブラックウッド卿のたくらむ毒ガステロは、なんだかオウムのサリン事件を思い出させました。ブラックウッド卿の最期は、ディケンズ原作の「オリバー!」の中の悪漢、ビル・サイクスを思わせました。

ロバート・ダウニーJr.は、まるでホームズのイメージではなかったけど、見終わる頃にはけっこういいなあと思えてきました。ワトソンのジュード・ロウはかっこよすぎかな。こういう組み合わせは意外でしたが、新しいヒーロー像を作ったとも言えそう。これは続編が作られそうですね。

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2010.03.24

グラン・トリノ

昨年、とても評判の高かった映画。まだ上映しているところを求めて、少し遠くのミニシアターまで行って見た。この作品は、ベトナム戦争後、アメリカに移住したモンのコミュニティと頑固一徹の白人の異文化接触が一つのテーマだということに興味を持って見に行きました。

モン族というのは、モン・クメールのモンではなく、日本ではミャオ族と呼ばれることの多いタイ・ラオス・中国南部に住む人々(H'monと綴るらしい)のこと。東南アジアの人というと、なんとなく、私たちはベトナム人、ラオス人と国名でひとくくりにしがちだけど、そうではない民族のアイデンティティがある。

お話の方は、まさにクリント・イーストウッドらしい老兵の美学に貫かれているわけだが(ここではあえてストーリーへの論評はしない)、自らの息子や孫よりも、亡き妻が信仰していた教会の神父よりも、いままで毛嫌いしていたアジア人に心安らぐさまなどの描き方がとてもよかった。
隣人の姉弟、英語を一言もしゃべらないおばあちゃん、モンのシャーマンなども魅力的に描かれていました。
モンの食べ物もおいしそうでした。

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2010.03.18

劔岳 点の記

監督:木村大作 原作:新田次郎 出演:浅野忠信、香川照之、仲村トオル、夏八木勲、役所広司(2009)

明治時代の日本地形図作成のための測量に懸ける男たちの物語。
よりよい地図を作るためには、標高が高く、見晴らしのよい標準点を設定することが必須であり、劔岳の山頂がその候補地として選ばれる。
測量士の芝崎芳太郎(浅野忠信)が劔岳の下見のため富山の駅に降り立つと、ホームの上で待ちかまえていた地元の案内人、長治郎(香川照之)に声をかけられる。
背負子姿の長治郎にどこからともなく場内から笑い声が。 大河ドラマ「龍馬伝」で、香川照之演じる岩崎弥太郎が、土佐で鳥かごを背負って売り歩くシーンを思い出してしまったんですね。
今回も弥太郎、いや、香川照之は主役を食う好演でした。

この他にも役所広司、小沢征悦、仲村トオル、笹野高史、國村隼と、最近の日本映画、ドラマでおなじみの俳優さん揃いの贅沢なキャスト。

でも、主役は劔岳なんだろうなあ。
まだ日本の山でこんな景色が見られるのだろうか。
とにかく、こんなすごい山の上でほんとうに撮影したというのがすごい。
ロケーションの迫力に比べ、ストーリーはわりとシンプルな気がしました。
測量士たちと日本山岳会の小島烏水との確執もけっこうさらりと和解するし、
なんか不吉な雰囲気を漂わせた松田龍平も九死に一生を得て生還するし。

最後に、原作が新田次郎だったことを知ったのですが。
亡父が新田次郎の山岳小説が好きだったので、私も父の蔵書から何冊かは読んでいました。
でも、この「点の記」は読んだことがなかったな。
山に登ると、山頂に標石が埋め込まれているところがよくあります。
今度、そういうところに立ったら、明治時代以来、地図作りのために山々に登ってこんな標石を立てた人たちのことを思い出すことでしょう。

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2010.02.03

パチャママの贈りもの

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松下俊文監督作品。(原題:El regalo de la Pachamama 日本・アメリカ・ボリビア合作 制作:Dolphin Productions:2009)
南米ボリビアのアンデス高地、ウユニ塩湖で塩を採取し、交易するケチュアの人々の暮らしを描く。
はじめは、ドキュメンタリーかと思って見始めたが、実際の暮らしに基づいて作られたフィクションだったらしい。でもオーディションで選ばれた人々の演技はとても自然で引き込まれた。

ウユニ塩湖といえば、写真でみたことがある。炎天下、氷にも見えるのは真っ白に結晶した塩の塊。その塩を切り出して、食用の塩として遠く離れた土地まで売りに行く。もちろん、今ではトラックで出荷する業者もあるのだが、高山の車の入れないような村に住む人々にとっては、昔ながらのリャマの背中ににをくくりつけた行商人が頼りだ。

ケチュアの少年コンドリは、父と共に初めてリャマの群れを引き連れて塩のキャラバンに出かける。野営、リャマの盗難、盗人への村人の制裁、炭坑での尋ね人、山村にすむ人々との物々交換、村を挙げての祭など、まさに色鮮やかなフォルクローレの世界。

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2010.01.15

ディア・ドクター

昨年のキネマ旬報ベストテンで日本映画のベストワンに輝いた作品。「ゆれる」の西川美和監督。
真っ暗なたんぼ道の中で何やら捜索に走り回る人々・・・どうやら、村の診療所の医師が失踪してしまったらしい。警察の捜査が始まり、捜査の過程でその医師の人となり、経歴、なぜ失踪しなくてはならなかったのかが時を遡るようにして、徐々にあきらかになっていく。
 数ヶ月前、高齢化の進んだ農村の診療所に都会の大学を出た研修医相馬(瑛太)がやってきた。診療所の医師伊野(笑福亭鶴瓶)は村人の信頼厚く、大竹看護師(余貴美子)とともに日夜診療にあたっている。しかし、その医師の言動はというと、最新の医学を学んできた若き研修医には腑に落ちないところもあった。だが、彼の献身的な診療活動と気さくな人柄に相馬自身もこれぞ医の原点と惹かれていく。なかなか診療をうけたがらない住民、かづ子(八千草薫)を往診で診察し、彼女が重篤な病気である可能性を知る。しかし、彼女は自分がもしも不治の病であるとしても、医師となっている自分の娘には知られたくないとも漏らし、伊野は彼女にあるウソをつき通そうと画策したのだが。

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2009.09.23

BALLAD 名もなき恋の歌

家族サービスで見に行った映画。劇場版クレヨンしんちゃんの実写版リメイクだそうで、映画の中では、しんちゃんは幼稚園児のしんのすけではなく、もう少し年のいった小学校低学年らしい「しんいち」。両親もみさえとひろしではなく、みさことあきら。この両親を演じるのが夏川結衣と筒井道隆。しんいちたちはタイムスリップして戦国時代の架空の国、春日の国に来てしまう。その国の領主が中村敦夫。お姫様が新垣結衣、幼なじみの強い武将が草彅剛。脇を固めるのが香川京子、大沢たかお、小沢征悦、斎藤由貴。お話は他愛ないものなのですが、いちおう、男の子の成長物語にもなっているのね。草彅君の演技はなかなかよくて、この映画そのものの撮影は例の騒ぎよりも前に完成していたようですが、これですっかり汚名返上ではないでしょうか。

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2009.09.15

女の子ものがたり

西原理恵子の自伝的作品が原作の映画。でもロケ地は出身地高知ではなく、愛媛県。

公式サイトで原作者が「女の子はお砂糖でできているのではありません。女の子はしょっぱい体験でできております」と語っていた、けっして甘くはない少女時代の回想。
マンガはマンガでよく売れているようだけれど、メタフィクションの形式をとった脚本もよくできている。

海辺の田舎町を出て、東京でマンガ家になったなつみが、スランプに陥り、少女時代の仲の良かった友達を思い出す。回想シーンの小学校時代、高校時代をそれぞれ別の俳優さんが演じている。なつみは黄色〜オレンジ、きいちゃんは赤系、みさちゃんは青〜緑系のものをいつも身に付けていて、この色が3人を象徴する記号のようだ。

この仲の良かった三人組がバラバラになる時が来る。
なつみはもともとこの町を出て行こうと思っていたとはいえ、きいちゃんに「この町から出て行け、そして二度と戻ってくんな」と言われる大げんかの末に、本当に出て行く。そして、きいちゃんともみさちゃんとも違う人生を歩む。

スランプの中で、故郷の町に戻り、友達の足跡をたどるなつみ。ふっきれたように「ともだちのことをマンガにしよう」と決めるところで映画は終わる。

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2009.05.03

ヒマラヤ映画2本

京都と神戸でヒマラヤ国際映画祭開催中。インド・ネパール・ブータン・チベットなどの地域の社会問題や文化をテーマとした映画30本が公開されています。
昨日は、みなみ会館で「残すのは足あとだけ」と「天空を駆ける」の2本を見てきました。
「残すのは足あとだけ」
インドヒマラヤ地域の観光開発とゴミによる環境の汚染や植生の破壊といった問題がテーマ。
ヒマラヤを臨む有名観光地は捨てられたペットボトルなど観光客の落としていくゴミが山積み。「ゴミはインドの象徴よ。観光を楽しめれば、ゴミなんて気にならないわ」と豪語する都会から来た観光客。
外部の人間による乱開発で、醜いホテルが乱立し、下水垂れ流しで汚れる湖。
一方、トレッキング客の持っているペットボトル、缶詰の数を申告させ、すべてを持ち帰るように保証金を預かり、付近の樹木を薪として採取しないよう調理に十分な石油燃料を持参することを義務づけている地域。
外部資本のホテルの進出を阻止し、地元の住民の家へのホームステイを推進している地域。
たぶん、こんなふうにエコフレンドリーな観光開発に取り組んでいるところはとっても少数派なのだろうけれど、なんでもありの無秩序なインドでもこういうことをやっているところもあるんだなあとちょっとほっとするところがある。

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