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2015.07.23

講演・対談:十年後の日本と世界

これも2004年の記事

池澤夏樹・鶴見俊輔 2004.6.12 京大会館

はじめに、主催団体「座・さばに」より今日の講演会の趣旨の紹介がありました。この団体はこの講演会を実行するために作られたもので、おもな構成メンバーはイラク反戦の運動を契機に集まった京都のいくつかの大学の学生グループだそうです。また、池澤さんを講演者として推薦されたのは、この会のメンバーでもある鶴見俊輔さんだったそうです。鶴見さんから「池澤さんは今日、明日だけではなくて未来の見られる人、そして外からの目を持って日本を見られる人である」という推薦の言葉がありました。続いて池澤さんの講演が始まりました。

十年後を語る

十年後を語るということは、予言をするということですが、これは十年経てば、当たりはずれがわかります。でも、十年後、自分はここにはいないかも知れないし、また、皆さんはここでぼくが何を言ったかを忘れているかも知れない。ですから、今日は自己抑制せずに言いたいことを言おうと思います。
今日、ここに集まられた皆さんは、現政権に必ずしも賛成していないか、あるいは反対している、そして、心の底から憲法改正したいとは思っていない、そういう方が多いのではないかと思っています。でも、ぼくはここでそういう方たちを前にして、「さあ、皆さん、いっしょにがんばりましょう」とは言いたくないんです。
そのかわり、まず、何がどうなっているのか、それを見ていきたい。

平和のために何かをしたい、がんばりましょうと言いあっていると、予想と願望が重なり合うことが多い。こうであるといいという願望が、こうでなくてはならない、という信念になり、それだけで話がまとまってしまいます。話が通じる人たちだけでまとまって、どんどん進んでいくと、振り向いたら誰もついてこない、そういうことになります。デモをするのはいい。しかし、落ち着いて考えるときは、現実を分析してみないといけないと思います。事態が悪いとしたら、何が悪くしているのか、その力関係を考える。政治学はpolitical scienceといいますね、つまり、科学です。政治の世界での綱引きの力を科学として考えてみないといけない。今、なぜ、われわれはここに立っているのか。それを明らかにする必要があります。
10年前、沖縄に引っ越しました。当時の知事は太田昌国です。彼は、中央政府にたてついて、米軍の土地貸借権について揺さぶりをかけていた。沖縄が力を持っていました。米兵の少女暴行事件の時は10万人が集まりました。この夏から、沖縄を出ることにしたのですが、「やっぱりおまえも出ていくのか」と出る理由を問われる。そこで、ひとまず、沖縄を出てくるお許しを得なくてはなりませんでした。今の日本は、全体が右に動いている。中曽根さんという人が、今は真ん中近くにいる。かつてはいちばん右にいると思われていた人です。中曽根さんが変わったのではない。それほどの勢いで右に動いているということです。そういった動きにたいして、抗議をする。論破しようと試みる。
民主主義というのは、選挙によって選ばれた議員の決めたことは守らなければならない。自分たちが選挙で投票してその議員を選んだ以上、その結果に異議申し立てができないんです。実際には、その手続きの中にウソ、情報隠しなど、さまざまな不正があります。しかし、今の日本が民主主義の国家であることは事実であり、その手続きによって進められたことを止めないでここまで来てしまった。その先、どうするか。たまたま10年後と行っているけれど、これ以上、右に行くのを止めるにはどうしたらいいのか。スローガン、お祈り、シュプレヒコールだけではだめだと思います。
去年の1〜3月、世界中でイラク反戦の運動が盛り上がりましたた。どこの国でもデモが起こった。ヨーロッパでは、イギリスが元気でしたね。イギリスでは、政府がアメリカに寄ると国民が反対するんです。一昨年の夏、イギリスで50万人のデモがありました。たまたまその時にイギリスにいたのでそのようすを見ることができました。そのころの日本では、デモに集まるのはたかだか数千人。去年2月のいちばん盛り上がったときでさえ、5万人です。他の国に比べて、一桁少ない。
日本の政府はアメリカべったりです。そして、メディアには国民を引っ張る力はありません。日本のメディアは、結局、国民を政府に結びつけようとするだけです。
イラクで戦争が始まったとき、各国のメディアがバグダッドに向かいました。一番元気だったのがカタールのアルジャジーラですね。日本のメディアはどうしたかというと、みんな引き上げてしまいました。
去年、ヨーロッパのジャーナリストにその話をしたら、あきれられました。日本のメディアが引き上げたということは、イラクで起こっている戦争に関心がないと言う日本の現状を反映しています。それほど切実に受けとめていなかったということです。国民が必要としていないからメディアも報じない。ニュースの需要と供給の関係です。

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