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2010.04.02

海角七号ー君想う、国境の南

魏特聖(ウェイ・ダーション)監督 2008年、台湾 原題「海角七號」
台湾で記録的な大ヒットとなったという評判の映画、大阪での上映も今日が最終日というので滑り込みで見に行きました。

時代を超えて二つのストーリーが交錯する。
恒春という台湾最南端の街で、元ミュージシャンの阿嘉(アガ:ファン・イーチェン)は、臨時の郵便配達をしながら、町おこしイベントの日本人の歌手(中孝介が本人の役で登場)のライブの前座として地元の人々とバンドに駆り出される。彼が手にした郵便物の一つは、今はない戦前の旧地名(それが海角七号)が書かれていて、配達不能。中身は日本人の男性から台湾の女性にあてられた古いラブレターだった。
書き手は植民地時代の日本人教師。教え子の少女(日本名、友子)への秘めた恋、彼はその思いを告げることなく終戦後、台湾を去った。彼の死後、出されなかった手紙の束を娘が見つけ、旧住所にあてて送ったのだ。
ライブのコーディネーター兼通訳を務める日本人女性の名前も友子。友子と阿嘉はイベントのすすめ方をめぐっていがみ合う。

この映画、この若い二人の話に昔のラブレターが絡むため、脚本がどうも分かりにくいのが難点です。
ナレーションとして読み上げられるラブレターは、あまり現実味がないし、どうしても届けなくちゃというほど、その二人の関係が見えてこない。で、その後、阿嘉と友子の間に、いきなりというように愛が生まれ、ありきたりなラブストーリーになって行く。日本人には、台湾で、なんでこれがタイタニックを越える大ヒットとなったのか、とうてい理解不能でしょう。

でも、台湾、とくに舞台となった南部に行ったことのある人には、その空気が伝わってくる映画です。阿嘉を演じたファン・イーチェンは台東生まれでアミの血を引いているという。台東も原住民が多く、のんびりした田舎町なので、この映画の空気と似ていると思う。
原住民族は人口比にして2パーセントくらいしかいないが、屏東とか台東は密度が高い。バンドでギターを弾くルカイの警官とか、やたら商売っ気たっぷりな客家のベース弾きとか、台湾の人から見た各少数民族のステレオタイプなのだろう。
きっちりスケジュール通りことが進まないと苛立ってしまう日本人っていうのも、台湾人から見た日本人のイメージそのものかもしれない。
さらに、北京語と台湾語が聞き分けられる人には、その使われ方の違いからもいろんなニュアンスが読み取れたのではないかと思う。
トンボ玉のネックレスはルカイやパイワンの民芸品としてお土産用にもよく売られているものだけど、この映画に出てきたように、一つ一つの柄に意味が込められている。 だから、それぞれが「自分の星」みたいに、自分にとっての象徴的な図柄を大事にしている。それを無頓着に親切のつもりでみんなにわたす友子の無知ぶりが示されているのである。

台湾人にとっては、どこかで見た風景、田舎の懐かしさがいっぱいで、そして、なんとなくエネルギーがもらえる映画だったのだろう。 台湾の田舎を舞台にした映画が大ヒットというのと、韓国で「牛の鈴音」が大ヒットしたということの背景は似ているかもしれない。

阿嘉役のファン・イーチェン(笵逸臣)、この役にはうってつけ。彼自身が作ったという歌もなかなかよかった。
友子役の田中千絵は、日本でも映画やドラマに出ていたことがあるというが、日本での知名度はゼロに近いだろう。この映画の大ヒットのおかげで、台湾では知らない人がないくらい、有名になった。台湾では、日本でも有名人だと思われていて、「田中千絵、知ってる?」とよく聞かれました。日本では、父の美容家、トニー・タナカ氏の方がまだ有名だろう。
中孝介は、歌はいいけど、演技はお世辞にもうまいとは言えませんでした。すべてのせりふが棒読み。本人役なのに、もっと自然に振る舞うことはできなかったのだろうか。台本、無視してアドリブでやればよかったのに。
印象に残ったのが茂じいさんと呼ばれていた月琴の人間国宝のおじさんでした。彼の存在がこの映画を映画らしくしたと言っても過言ではないでしょう。

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