« 土人 | トップページ | 算法少女 »

2007.04.23

あかね空

直木賞受賞作となった山本一力原作の「あかね空」の映画化。映画を見てから原作も読んだ。

京で修行した豆腐職人の永吉が、のれん分けを許され、江戸の深川で豆腐屋「京や」を始める。当時の江戸の豆腐は硬くてしっかりしたいわゆる田舎豆腐。永吉の作る豆腐は柔らかい京風で、江戸の長屋の住民にはまるで人気がない。江戸時代に書かれた『守貞漫稿』にも、江戸と上方の豆腐の違いが書かれており、このお話でもそれが重要なポイントとなっている。

 初めはまったく売れなかった京やの豆腐だが、京豆腐の味を理解するような上客や、お寺という大口客を得てしだいに成功する。その陰には、亀戸天神の雑踏で幼い子どもを失った豆腐職人夫妻との縁や、功徳があるのだが。永吉は同じ長屋の桶屋の娘、おふみと所帯を持ち、二人の息子と一人の娘に恵まれるが、長男の栄太郎は、賭場に足を踏み入れ身を持ち崩していく。ボンボン育ちの栄太郎は商売敵の豆腐屋のかっこうのカモとなってしまうが、賭場を仕切る傳蔵という渡世人の侠気に救われる。 

映画では、石臼で豆をひき、真っ白な豆乳や湯気を立てるおぼろ豆腐、水の中にただよう豆腐などの映像がとてもおいしそう。また、内野聖陽が実直な豆腐職人の永吉と、得体の知れない傳蔵親分を二役で演じ分けているところも見もの。また、雨の中の婚礼、雪の中の葬式のふたつの行列のシーンがとても美しかった。

原作の方は、もう少し、人間関係が複雑に詳しく描き込まれている。どうして栄太郎がダメなマザコンに育ってしまったのか、傳蔵という男はどんな育ちをしたのかといった映画では描き足りなかったところも腑に落ちる。結末も映画の方はちょっと無理があるが、原作の方なら納得だ。お話を楽しむなら原作、映像美を堪能するには映画。両方合わせての鑑賞がおすすめ。

 

|

« 土人 | トップページ | 算法少女 »

book」カテゴリの記事

cinema」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« 土人 | トップページ | 算法少女 »