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2005.10.31

カワムツの夏

『カワムツの夏 ある雑魚の生態』片野修 京都大学学術出版会。
○○○○の夏、とあると、なんだか青春ものの映画か小説の題名のようだ。
カワムツというのは人里近い川に住むありふれた魚の名前。京都盆地に流れ込む川にはどこにでもいる雑魚だ。
でも、そんなにありふれた魚でありながら、わたしはその魚のことをつい最近まで知らなかった。
山道を歩きながら、渓流に魚影が見える。「あ、魚がいる。アユかな、ウグイかな。それともハヤとかいう魚なのかな?まさか、アマゴはいないよね・・・」
その認識の中に、カワムツの名はなかった。単に、知らなかったからだが。
2年前に、子どもと一緒に魚すくいをして、2cmにも満たないような稚魚をひとすくい家に持ち帰った。
そのまま、水槽で飼ううちにどんどん数が減ってしまったが、最後に残った一尾が4,5cmに育って、ようやく特徴がわかるようになって、ネット上の図鑑で調べて、それが「カワムツ」という名前の魚であることを知ったのだ。
そんな名前の魚がいることすら知らなかった。カワムツにもA型とB型があり、A型の方は最近ヌマムツと改名された。私が見てきたのはB型だから、今もカワムツである。
今、その2年もののカワムツは10cm以上に育ってリビングの水槽でゆうゆうと泳いでいる。今年の夏の終わりにもまたひとすくい、チビを捕まえてきたので、こちらは3cmくらいのが10数匹、別の水槽で群れている。
この魚の生態を研究している人が、やはり、ちゃんといたのだ。
しかも、調査地は京都だ。

サルやシカといった大型ほ乳類を個体識別して生態学的な調査をするのはよく知られているけれど、こんな「どれ見ても一緒!」な魚にも、いちいち識別用のラベルを付けて、個体識別してその行動をつぶさに研究するという同じことがおこなわれていた。

カワムツというのは、私もそうだったけれど、身近な割には「それがカワムツという名だということも知らない」人々によって取られたり、遊ばれたりしている、地味な魚だ。のろまで子どもにも捕まりやすい。食べてもたいしておいしくないらしい。
そんな雑魚でも、毎日、餌をやったり、たまに水槽の水を換えたりしていると愛着が湧く。のろまといわれるが、水面に虫などを落とすと跳びかかっていく姿に野生を感じさせもする。泳いでいる姿を見るだけで、心が和む。
だから、この本に詳しく述べられている野生のカワムツの生態はとても興味深く、面白かった。
これが、専門的な論文であったら、いくら好きなカワムツのことを書いてあっても読む気にならなかっただろう。
この本は、専門性を排して、一般読者向けにとてもわかりやすく書かれている。
カワムツは産卵したあと、ちょっと砂利をかぶせるくらいなので、すぐにその卵を別の個体に食べられてしまう。それだけでなく、生んだ本人も食べてしまうので、生き残る卵はすごく少ないというのにはびっくりだった。
そうやって卵を食べて栄養をつけて、またせっせと卵を産むのだそうだ。だから、産卵期にはさかんに産卵行動をしたメスもオスもほとんど体が大きくならない。なるヒマがないのだ。
6月から8月にかけてが、カワムツたちの繁殖の季節なのだが、「カワムツの夏」は、やっぱり、カワムツたちの青春のものがたりであった。

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コメント

 私が最初に読んだ生態学に関する本は、オイカワとカワムツについての調査結果によるものでした。
 オイカワというのは目立つ魚ですので、それまでにも知っていましたが、カワムツに関しては、それまで「モロコ」だと思いこんでいた魚でした。

投稿: 南郷力丸 | 2005.11.07 15:54

中々楽しいですね。僕も川むつを今年からまじめに飼い始めました。メダカも金魚も

子供を生ませたいと思っています。メダカはもう7年くらいでうまく行きますが、金魚、川むつは初めての出産体験です。

投稿: 桜木 | 2011.06.05 08:25

桜木さん、
コメントありがとうございます。
カワムツ、なかなか楽しいですよ。
うちのカワムツは1代目はあまりにおおきくなったので、元の川に返し、二代目の3匹は、子どもの友達のいたずらで全滅してしまいました。
また、なにか飼いたいと思っています。
きらびやかな熱帯魚などよりは、日本の在来の魚がいいですね。
放置気味のサイトのため、SPAM除けに承認制にしており、コメント反映に時間差がありますが、ご容赦を。

投稿: EMY | 2011.06.05 11:29

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