« シルヴィア | トップページ | 「イムジン河」の時代 »

2005.02.14

マルセル・デュシャンと二十世紀芸術

先日(14日)、神奈川県まで行ったついでに横浜市美術館に立ち寄って、この展覧会を見てきた。
ほんとうは、ついこの間(12月)まで、大阪の中之島に移転した国立国際美術館で開かれていたのだけれど、近いところにあるといつでも行けると思うのがかえって落とし穴。そのうちと思っているうちに会期が終了してしまっていたのだ。それが今、横浜に移って開催中ということを知ったのはえこまさんのおかげ。そして、今回、ちょっと遠回りでも是非見て帰ろうと思ったのも、彼女が何日にもわたってこの展覧会を熱く書き綴っているのを見たおかげでもある。Thanks。

横浜市美術館は、地下鉄のみなとみらい駅下車、地上に出るとすぐ目の前。雨の日でも濡れずに行けそうだ。
入り口ホールから右手に階段を上がっていくと企画展の会場。
ナムジュン・パイクのビデオ作品を上映する大型モニターがあったけれど、まずは、本家本元の作品鑑賞から。
最初の部屋では、有名な泉。男子用小便器に架空のサインだけを施してアンデパンダン展に出品しようとし、出品を拒否されたといういわく付きの「レディメイド作品」。
そのすぐ横には、別の作家による金ぴかのほぼ同型の小便器の作品があり、この二つめの便器は、デュシャンのあの先行作品への共通理解があるからこそ成立する再解釈の試みということになる。
以後も、そんな感じで、マルセル・デュシャンの主な作品と、デュシャンに影響を受けた20世紀の作家たちの作品がside by sideで見られるような展示方法になっている。
デュシャンの初期のキュビスム的な絵画作品「階段を降りる裸体」と同じ部屋には、久保田茂子の映像作品「デュシャンピアナ」や、リヒターの具象絵画があった。生々しい「裸体の女」が階段を降りてくる姿にぎょっ。デュシャンの絵は、衣服も、肉も性もはぎ取った高度に抽象化された「裸体」だったんで、生身の女の裸を想定していなかったんだもん。
それから、いくつもの「レディメイド」とそれにインスパイアされた後代の作家たちの作品群を楽しく眺めた。
椅子に取り付けられた自転車の車輪、帽子掛け、コート掛けなど、そのもののカタチにユーモアが感じられる。天井からつるされた帽子かけがモビールのようにくるくる回り、そのタコの足のような影が床や壁に映る。既製品に何も手を加えない「レディメイド」から、他の作家による、さらにそのレディメイドをもう一ひねり二ひねりした作品が続く。
モナリザにヒゲをつけた「L.H.O.O.Q.」(この文字列を続けて読むと「Elle a shaud au cul」なる地口だというのは、どこで読んだんだっけ?池田満寿夫?)。
名前しか聞いたことのなかった「大ガラス」にも対面することができた。そのさまざまな部分のスケッチや、設計図のような断片も。
また、デュシャンが女性名「ローズ・セラヴィ」で発表した「fresh window」をはじめとする作品群とそのパロディ、とりわけ、ローズ・セラヴィに扮したマルセル・デュシャンに扮した森村泰昌は秀逸。藤本由起夫のテクストと音による作品も楽しかった。
死後何年も経ってからその存在が知られることになった遺作「(1)落ちる水 (2)照明用ガス、が与えられたとせよ」。
これは小さな部屋のようになっていて、上方に置かれたプロジェクターから壁面の映像が映し出されていた。その壁面には小さな覗き穴がついていて、引き込まれるようにしてその壁に近づき、小穴から覗き込むと、そこに作品があるという仕掛け。どこにも「中に入って、覗いてみてください」とは書いていないのに、思わずそうしてしまう、人の心理を突いているね。
これは、現物は建物ごと運べないので、今回の日本での展覧会ではこういった「壁を映写する」という方法をとったらしい。穴に顔を押しつけて見てしまう人が多いのか、額や鼻のあたる位置がテカテカしてた。

それにしても、出発点におい「排除されるべき異端」であったデュシャンの作品が、有名になることで逆にこれほど多くのパロディを生み出す「模倣される権威」になっていったということ。
アートにおける権威って何なのだ?というデュシャンの問いが、それぞれの形で作り替えられ、継承され、またあらたな問いを生み出す活動になっている。 そういうつながりのようなものを見せてくれたところがなかなかよかった。
お土産に買ったのは、デュシャンのポートレート写真の絵葉書。
会場には、彼の写真が何点も展示されていたんだけれど、無表情を装っているようで、実は微かにいたずらっぽい視線を投げかけている、その表情が何とも言えずチャーミングだったので。
初めて行った美術館だったので常設展も見たかったのだけれど、あまり時間がなかったので、ダリ、デルボーなどのシュールレアリスムの絵画を数点見てきました。

|

« シルヴィア | トップページ | 「イムジン河」の時代 »

exhibition & event」カテゴリの記事

コメント

EMYさんTBをありがとうございます。
興味深く読ませていただきました。
「L.H.O.O.Q」って地口だったのですか。初めて知りました。何を現してるのかなぁと思ってました。

>多くのパロディを生み出す「模倣される権威」になっていったということ

20世紀、便器で権威に挑戦し拒まれたマルセルが、21世紀では現代美術の権威としてレディ・メイドの当初のオリジナルはすでにないという説明パネル付きで世界で回顧展が催されている。そんなオチを彼自身予測しなかったでしょうね(笑)。

投稿: えこま | 2005.02.28 13:50

えこまさん、
こちらこそです。
おかげ様でいい時間がすごせました。
あんなにいろいろと解説パネルがあったのに、なぜかあのコトバの解説はありませんでしたね。

投稿: EMY | 2005.03.01 14:07

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/5103/2980038

この記事へのトラックバック一覧です: マルセル・デュシャンと二十世紀芸術:

» デュシャンと20世紀美術展*横浜美術館 [ヘンかわおいしいお役立ち◎ARTLABOVAのブログ]
前日の深夜に和歌山から車で、戻ったばかりだというのに、きょうは、もうデュシャン展の最終日!とばかりに、横浜美術館に駆け付けてみた。最終日とあってかなりの人出。この展覧会を見るための手助けとなるチェックシートなんかもあって、(チェックシートの意味がわかり...... [続きを読む]

受信: 2005.04.07 18:40

« シルヴィア | トップページ | 「イムジン河」の時代 »