« タイマグラばあちゃん | トップページ | 節分と厄除け・まじない・縁起物の世界 »

2005.02.02

草間彌生展 永遠の現在

Kusama_01京都で久しぶりの大雪の降った日、京都国立近代美術館で開催中の「草間彌生展 永遠の現在」を見に行ってきた。
去年、東京での展覧会を見に行った友人がとてもよかったと話していたので、わくわくして見に行った。
美術館の近くの画材屋さんに立ち寄ったら、「きょうは雪だから展覧会も空いているでしょう」と言われたけれど、その通り。日曜日などは中で行列ができるほどの人気らしいので、こんな日に出かけたのは正解であった。

3階の入り口がカボチャの部屋。黄色と黒のドットで彩色されたカボチャ、カボチャ、カボチャ。
その次が、《Infinity Mirrored Room 信濃の灯》と題された鏡を張り巡らせた部屋。自分が6面の万華鏡の中に入ってしまうとどうなるか?どの壁からも自分の姿が迫ってくる。その内部にはもうひとつ鏡張りの小部屋があって、台の上に立ってのぞき込むことができる。そこでは色とりどりの無数のランプが点滅して、また別の世界を作り出していた。

次が1950年代の水彩画。20代の初めの頃にすでに網目や水玉のモチーフがあらわれている。というよりも、もっと驚くのは小学校5年生の時の鉛筆書きの肖像画。彼女は幼いときから幻覚や幻聴があったということだけれど、その絵でも顔や着物や背景をびっしりと斑点が覆い尽くしているのだ。

Kusama_04これは、1970年代のコラージュ作品のひとつ「ねぐらに帰る魂」。この一連のコラージュは、昆虫や動物のモチーフが多い。色調は暗く、どことなくもの悲しさを感じさせるけれど、好きな作品群。
≪I'm Here,but Nothing≫と題された部屋は、蛍光色の水玉で覆われた一角。ブラックライトで照らされて、ピンクや黄色やオレンジの点々が蛍光で浮かび上がる。手にしている館内用のパンフも蛍光で輝いている。そこに置かれたTVでは、60年代の彼女の活動を記録した映像のビデオが音を消したままえんえんと流されていた。そうだ、私が草間彌生の名前を知ったのはその頃。メディアでは、オノ・ヨーコと並んで、海外でヘンなパフォーミングアートをしているお騒がせ日本人という扱いだったな。
その次が、この展覧会のハイライト≪水上の蛍≫。ドアの前に係員がいて、一人ずつ誘導してくれる。ドアを開けて中に入り、ドアが閉じられると、そこは蛍のような小さなライトが上下左右前後すべての方向に浮かぶ夢の海。深い海の底にいるような、宇宙の星の塵にまみれているような。自分の身体も、この異次元に浮遊している感覚が味わえる。空いていたので、何度も入ってみる人がいたくらい。

この水上の蛍を見た後、椅子に座って休み、網目模様のモノクロームの絵にかこまれながら、図録を読んだ。
草間彌生は、長野県松本市の生まれ。京都市立美術工芸学校(今の京都市立芸大)で学ぶ。
幼少時から幻覚、幻聴といった自覚症状があった。そのことから精神科医西丸四方との出会いがある。
西丸四方の名前は知っていた。山歩きや食べ物の本をたくさん書いていた西丸震哉の兄である。でも、西丸四方と草間彌生にこんな深い関わりがあるとは知らなかった。彼は精神科医として草間に会い、彼女の症例を発表する一方で、彼女の絵画の才能を認めて個展を開く手助けなどをしている。たぶん、そういったことが背後にあるのだろう。この展覧会の出品作品には個人蔵のものが多くあるが、いろいろな病院とか医師会館といったところの所有である作品が少なくないのだ。

そんなことを考えながら次に進む。
「銀色のオブジェ」の部屋は、おなじみ、ぼこぼこ、うにょうにょの(ムーミンに出てくるニョロを想像してほしい。あるいは、腸内の粘膜上の繊毛状組織とか)の造形に囲まれ、銀色のスプレーをかけられたドレッサー、台所道具など、船など。ええっ、パンフには「群生するファルス」と書いてある。うーん、男根っていうイメージはなかったけどな。後述するランチを食べる前に読まなくてよかった。

そして、1980年以後の水玉や網目に覆われた絵画、地面からにょきっと生えてきたような造形作品、4階の天国の梯子。これだけまとめて草間作品を見たのは初めてだったので、ほんとうにクサマワールドを満喫したという感じだった。
館内のレストランに、この展覧会にちなんだメニューとして、草間彌生ランチとドルチェがあり、ちょうどお昼時だったのでランチを注文。どこが草間彌生かというと、メインがニョッキなのでした。ちょっとあのうにょうにょのソフトファニチャーの形に似ているというわけで。窓越しに雪景色を見ながらのランチはなかなかよかったです。(2月13日まで)

|

« タイマグラばあちゃん | トップページ | 節分と厄除け・まじない・縁起物の世界 »

exhibition & event」カテゴリの記事

コメント

草間さんの展覧会、おもしろそうですね。
やはり茶色と黒の斑点のカボチャが浮かびます。
彼女が子どもの頃から幻覚や幻聴に悩まされ、
そこからあの水玉や斑点のイメージが生まれた、
ということを教えてくれたのはわたしの遠縁の美術評論家でした。
ファニーというかポップというか、日常からの逸脱が不安な反面、
それが妙に楽しい、彼女の作品はそんな感じです。

投稿: ごんふく | 2005.02.10 22:57

ごんふくさん、ご親戚に美術評論家があるのですね。
幻覚とか幻聴というのは、当人にとっては幻ではなく実体なのですね。
斑点に覆われた小学校5年生のときの肖像画(お母さんがモデルらしいです)を見たときに、ああ、この人には最初からこれが見えていたんだと実感しました。
その一方で、見る人すべてに幻の世界を体験させる装置を作ってしまう、見る人を驚き楽しませてくれる、そんなところに愛のあるメッセージを感じましたね。

投稿: EMY | 2005.02.15 15:23

遠縁の美術評論家というのは母の従弟で、
毎日新聞の学芸部の記者をしてたんですが、美術評論に専念し、
埼玉近代美術館や熊本現代美術館の館長を勤めました。
ただ残念ながら昨年の3月にガンで亡くなっています。

投稿: ごんふく | 2005.02.15 23:58

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/5103/2850430

この記事へのトラックバック一覧です: 草間彌生展 永遠の現在:

« タイマグラばあちゃん | トップページ | 節分と厄除け・まじない・縁起物の世界 »