2009.01.26

星兎

『星兎』寮美千子著、パロル舎(1999)。
星からやってきた「うさぎ」と少年。他の誰とも共有することのない、自分一人だけにとっての大切な存在との出会いと別れ・・・平たく言ってしまえば、前回やや酷評してしまった「ラースとその彼女」と同じプロットながら、とことん通俗性を排し、少年期の清らかな印象だけを描ききることに成功したファンタジー。

他人の目からは見たらありえない存在との濃密な交流。それ自体は珍しくはないテーマだ。しかし、映画の「ラース」は、第三者の目から見た映像なのに対し、この物語は「ぼく」が一人称で体験を語る。だから、読者は主人公に感情移入しやすいし、その体験を自分のものとして共有しつつ読む。でも、それだけじゃないな。こういうお話はやっぱり、思春期の入り口にいる若いというか幼い者のものだという気がする。
もちろん、大人だってファンタジーに生きてもいい。
でも、夢から覚めて、現実の生活を生き始めるとき、少年から大人へという移行と重ねた方がしっくりくるんだ。

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2009.01.20

ラースとその彼女

北アメリカの北部に位置する小さな町。けっして人づきあいが悪いわけではないが、シャイで彼女もいない27歳のラース。亡き両親の住んでいた家のガレージを住居用に改装して一人で暮らしている。母屋の方には兄とその妻が住んでいて、友だちもなく孤立しているラースを気遣い、たびたび食事に誘うが、なかなか応じてもらえない。
教会には熱心に通い、地元の人とも顔なじみ。でも、会社の同僚の女の子のアプローチには逃げ腰。同僚の男性が「お好みの彼女が注文できる」サイトを教えてくれるが、笑ってやり過ごすだけだった。
しかし、そんな彼のところに理想のガールフレンドがやってくる。大喜びで迎えた兄夫婦が見たのは、等身大のリアルドールのビアンカ。動転する兄夫婦。ビアンカはブラジル人とデンマーク人のハーフで宣教師。下半身不随で車椅子がないと移動できない。しかし、道中で車椅子も、着替えの入った荷物もすべて盗まれてしまったという。しかも信心深い彼女は一人暮らしのラースと一緒には住めないというので、兄夫婦の住む母屋で以前、母親が使っていた部屋に泊まることになる。翌日、兄夫婦は「彼女は具合が悪そうだから医者に診てもらったら」と提案、ラースと彼女を町のクリニックに連れて行く。
 クリニックの医師の提案は、ラースのいうことを信じたふりをしろというものだった。

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2009.01.10

タイタンズを忘れない

BSで。よい映画だという評判を聞いていたので、予備知識なしで見始める。1971年、公民権運動後の白人と黒人の平等教育が進められつつあったころのアメリカ、ヴァージニア州。高校のアメリカンフットボールのチームに黒人のコーチ、ブーン(デンゼル・ワシントン)が任命される。それもアシスタントではなくいきなりトップコーチに。それまでチームを率いていた白人のコーチ、ヨーストは、自分のやり方に自信を持っていただけに、不満を隠せず、高校を去ろうとする。しかし、ブーンはヨーストをディフェンス専門のアシスタントコーチに任命。ヨーストの娘はまだ小学生くらいながら、たいへんなアメフトファンで、コーチであるパパを誇りに思っていた。白人の生徒とその保護者たちも不満だらけ。しかし、そんな周囲の反感もなんのその、毅然とした態度で自分のやり方を貫くブーン。アメフトコーチとして厳しいだけでなく、勉強について行けそうもないと弱音を吐く白人の選手には、勉強の補習までしてやる。白人選手のエリート意識をへし折る一方で、めきめきと頭角を現してきた黒人選手を甘やかすこともしない。そんなことをすれば、かえって社会に出たときに勘違いするというのだ。
 合宿の最中にあの南北戦争の激戦地、リンカーンの演説で有名なゲチスバーグにチームメンバーを連れ出して、演説までしてしまう。
 チーム、タイタンズはブーンとヨーストの強力タッグで州予選を勝ち抜いていく。はじめはブーンを憎んでいたヨーストの娘もブーン一家に出入りするようになる。彼女は試合ビデオを見てブーンと作戦について語るほどだったりするのだが、それとは対照的にブーンの娘たちはまったくアメフトには興味がない。
 勝ち進んでいくタイタンズ。そして、チームの中では白人と黒人という壁を越えた友情が築かれていくが、彼らを取り巻く社会はまだそうはなっていない。新学期が始まってクラスメートやガールフレンドに出会うと、あからさまに黒人とつき合うことを偏見の目で見たり。より「進んだ」西海岸から来たメンバーが、黒人のメンバーを連れて店に入ろうとすると、拒否されたり。
 人種を越えた友情とすぐれた黒人リーダーの率いたチームの勝利という理想的すぎる美談になっている気がするが、こういう啓蒙映画にそのくらいはいいか。アメフトという競技をよく知らないので、アメフト映画としておもしろかったのかどうかはわからない。それにしても、球技というより、肉弾相撃つといった風情の競技ですね。
 音楽は70年代のアメリカンポップス。まさに私自身が高校生のころ、聞いていた曲だ。ああ、この主人公たちは私と同世代だったのだ、と見終わってから思ったのだった。

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2009.01.03

K-21 怪人二十面相・伝

お正月にはお正月らしい映画をというわけで、子ども連れでシネコンへ。
怪人二十面相といえば、江戸川乱歩だけれど、これは北村想による「怪人二十面相伝」を下敷きに、さらに映画用に設定を変えて作られたお話。子どもはちょうど江戸川乱歩の少年向け小説を読み始めたところなので、明智小五郎も小林少年もおなじみである。

舞台は太平洋戦争を回避した日本。国土が空襲で焼け野原になり、アメリカが進駐して憲法も改正される・・・ということがなかっただけでなく、華族と平民の身分制度が残り、極端に貧富の差の激しい奇妙なパラレルワールドとなっている。
 冒頭の空からみた「帝都」の風景は暗く不気味だ。サーカス小屋で超人的な技を披露する軽業師遠藤平吉(金城武)。なんだか腰の低そうな団長(小日向文世)。からくり師源治(國村隼)。
 カストリ雑誌の記者(鹿賀丈史)に明智小五郎(仲村トオル)と財閥の令嬢(松たか子)との婚約式の写真を撮るように頼まれた平吉は、怪人二十面相の罠にまんまと嵌り、二十面相と誤認され、逮捕されてしまう。警察では殴る蹴るの拷問を受けるが、そこで留置所の中にいる男(松重豊)から「あんたは怪人二十面相じゃない」といわれる。さらに、護送中に源治の仲間の泥棒たちの活躍で脱走に成功する。二十面相との嫌疑をかけられ、指名手配もされて居場所もなくなった平吉。どろぼう長屋で二十面相と同等の能力を身につける秘伝書を渡され、必死の修行に励む。一方、二十面相に誘拐されそうになった令嬢容子は、間一髪のところで平吉に救われ、どろぼう長屋にやってきて、生まれて初めて下層階級の暮らしに触れる。怪人二十面相の狙いは、どうやら彼女の祖父が残した特殊なエネルギー変換装置、テフラ装置らしい。
 

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2008.12.30

2008年に見た映画

もう、このサイトにきちんと映画評を書くことがなくなってしまったので、別サイトのメモ、手帳などからこの一年に見た映画を拾い出してみました。
映画館で見たのは23本。映画が見たいのに思うように見に行けない!と欲求不満の募る1年だったので、それでも月平均2本見ていたというのが意外です。でも、そのうち、お子様サービスで見たのが「ドラえもん、ポケモン、紀元前一万年、ナルニア、ポニョ」と5本ですからね。以前はよく見ていた韓国映画を1本しか見てないし、中国語圏映画も2本だけ。やっぱり、自分が見たくて見にいった映画が10数本ですから、全体としては少なかったですね。
でも、本数が少なかった分、ハズレも少なかったと思います。劇場で見たものにだけ★をつけてみました。

1月
 「バブルへGO!」(TV)
 「チャーリーとチョコレート工場」(TVとレンタルDVD)
 「モーターサイクル・ダイアリーズ」(TVで再視聴)
 「その名にちなんで」★★★
 「カンナさん、大成功です」★
 「迷子の警察音楽隊」★★
 「エンジェル」★★
2月
 「サラエボの花」★★★
 「星になった少年」(TV)
 「オリバー!」(TV)
 「ガス燈」(TV)
 「アマデウス ディレクターズカット」(TV)
 「君の涙 ドナウに流れ」★★★
 「長江哀歌」★★★
3月
 「ある愛の風景」★★★
 「ドラえもん のび太と緑の巨人伝」
4月
 「ファーストフード・ネイション」★
 「オリバー・ツイスト」(TV)
 「胡同の理髪師」★★
 「夜顔」★★
 「トスカーナの休日」(TV)
5月
 「紀元前一万年」
 「ナルニア国物語 第一章ライオンと魔女」(TV)
 「つぐない」★★★
7月
 「ナルニア国物語 第二章 カスピアン王子のつのぶえ」★
 「時をかける少女」(TV)
 「ポケモン ギラティナと氷空の花束シェイミ」
9月
 「接吻」★★★
 「ネコナデ」
10月
 「ざくろの色」★★
 「社葬」(TV)
11月
 「コレラの時代の愛」★★★
 「マルタのやさしい刺繍」★★
12月
 「落下の帝国」★★
 「崖の上のポニョ」★

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2008.12.16

spam

半年以上、ほったらかしのサイトなのに、spamコメントだけがつくようになって、そのコメント通知メールが来るたびに削除するというのも鬱陶しいので、コメント承認制、トラックバック禁止にしました。
これで、spamコメントが来なくなるといいのですが。
(付記)
コメント承認制にしても、まだ来るのですね。承認せずに消去しているので画面には現れませんが、これもまた面倒なので、spamのついた履歴のある記事はコメント不可に変更しました。

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2008.04.14

Unaccustoomed Earth

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ジュンパ・ラヒリ(Jhumpa Lahiri)、待望の新作。
表題作「Unaccustomed Earth」ほか、7編が収録されている。短編の多くはニューヨーカーなどに発表されたもの。私もニューヨーカー誌、およびそのウェブサイトですでに読んだものもある。

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2008.04.11

ファーストフード・ネイション

リチャード・リンクレイター監督。エリック・シュローサー原作。
あのスパーロックのドキュメンタリー「スーパーサイズ・ミー」が公開されたとき、日本のファーストフード業界の圧力で映画の宣伝がほとんどできなかったというのは本当だったのかなあ。上映館には関連図書としてこのエリック・シュローサーの「ファストフードが世界を食いつくす」が売られていたっけ。私はそれを買わなかったけれど、後に「スーパーサイズ・ミー」のDVDを買ったら特典映像としてシュローサーのインタビューもついていた。

そのシュローサーの原作だということはあまり意識せずに見にいった。ファストフードをいい加減さを笑いのめすコメディだと思っていたのだが、けっこうシリアスな背景を描いていて軽いタッチの割りにはそれなりの問題提起があり、社会派としては娯楽性も備えた映画になっていると思った。

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