自然の波の音、水の音、人々の声、歌といった音声だけで、ナレーションも音楽もない。美しい島の風景を捉えた映像が、じっくりと見せる構成。
それはいいんだけど、「気候変動で沈む」ということを登場人物に言わせる(あえて地球温暖化という言葉は避けたそうだ)以上、やはり地球環境問題を考えさせる映画ではあるのだ。
監督がこの映画を作ろうと決心したきっかけになったパタゴニアの氷河が溶けていく問題と、アラスカの凍土が溶けるという話は、温暖化と結びつけてもいいと思うが、他の二つ(ベネチアの高潮による浸水とツバルの浸水)に関しては、一緒くたにするのは危険だ。
そういうことに関するナレーションがなく、科学的な解説もないのが、ちょっとまずいなあという印象。
どれも「沈みゆく島」の映像というくくりではくくれる。
でも、高度に開発された都市であるベネチアだけがあれほどまでの高潮にあって「沈む」というのは、明白に「地盤沈下」の影響でしょう。温暖化による海面上昇ならイタリア全土の海岸が沈むはず。
そして、今や温暖化で沈む島のシンボル的存在であるツバルも、実は人為的な原因による「沈下」であることは、ちゃんと指摘されている。
http://monden.daa.jp/01tuvalu/guest03a.html
私は、この映画は映像としてはいい場面がいっぱいあると思うが、見た後でいろいろ考えたり語ったりする人のために、やっぱりこういう解説をつけたパンフレットを発行すべきだったと思う。いや、そういうものがあってしかるべきだと思って見た後で買おうとしたら、なかった。映画館で売られていたのは、この映画のロケ地での写真とプロダクションノートを合体させた写真集のみ。これは、とても残念なことだ。
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